コインは記憶しない
ちょっと前に、為替相場におけるレートの上昇と下降は、コイン投げとは違うと書いた。
どう違うというのだろう。
コイン投げで表が出る確率は常に 1/2 だ。為替相場におけるレートの上がり下がりの判定はコインの表裏ほど単純ではないが、たとえば上昇する確率は 1/2 なのだろうか。
ただし、コインには表でも裏でもなく立つ場合があるかもしれないし、相場には上昇でも下降でもなく変化なしの場合もあるだろう。とくに相場の場合の結果として値動きなしという場合は現実的なものだ。しかし、ここではそのような場合を思考実験上排除することにしよう。
そのうえで、レートの上昇確率は 1/2 といえるだろうか。答えは NO だ。間違いない。
コインの場合は、前に投げた結果を記憶することはないから、投げるごとに 1/2 の確率を期待できるのだ。たとえ偏ったとしても十分な回数を繰り返せば大数の法則に従い 1/2 に収束していくだろう。
為替相場の場合はどうだろう。
そうだ、相場は前に起こった結果を記憶するのだ。それによって、上昇確率は 1/2 よりも大きくなることがあるし、上昇しすぎたときには、下降する確率のほうが増える場合と、それとは逆にさらに上昇確率のほうが増えるという場合もあるのだ。
これが相場の正体であり、これ以外の理由のよる法則はないだろうというものが、相場仮説の内容なのだ。もう一度、その相場仮説をここに掲載することにしよう。
【 まじんの相場仮説 】
① 相場は不規則に上下を繰り返している
② 一度動いたらある程度継続する
③ 動きに大きな方向性が生まれることがある
④ ①②③以外に法則性はない
⑤ 相場はゼロサムを維持するように絶えず調整される
為替相場は人間心理により動くともいえるので、上がりすぎたから下がろうという場合と、だいぶ上がったからもっと上がろうという場合以外の場合がないともいえないが、変化のしかたやその程度を別にすると、おおよそ、つぎの4つの場合に分類できるだろう。
(1) 上がったから下がる
(2) 上がったからもっと上がる
(3) 下がったから上がる
(4) 下がったからもっと下がる
この (1)~(4) の組み合わせで相場が構成されていると考えられる。ただし、⑤がどういう形で相場に影響を与えるのかは、ぼくにはわかっていない。
うえの一見単純な動きを捉えることがテクニカル分析といえるだろうし、この法則をうまく捉えた者だけが相場で勝てるということなのだろう。