魔術師をめざして

魔術師を目指して、相場・数学・プログラム言語を研究しています。

肉の塊

【 ある磔刑の基部にいる人物像のための三習作 - Francis Bacon 】

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人間とはなにか。

そうだね、人間は生きていても死んでも肉の塊に過ぎない。そう感じるのはぼくだけか。

人間の内的なもの、精神は輝いているのだって? その意見には反論しないよ。

ある子供がぼくに言った。(ぼくは応えた)

虫はかわいそう。(どうして?) だって早く死んじゃうでしょ。(人間だって早く死んじゃうじゃないか。)虫のほうがずっと早く死ぬでしょ。(ぼくはそんなに違わないように思うけどね。)それに虫は生きていても楽しくなさそうだよ。(人間だって、食べて、うんこして、寝て、また、食べて、うんこして、寝て..。虫とどこが違うんだ。それに、虫はいつだって自然の中で生きている。人間より幸せかもしれないんじゃないか。)虫はゲームとかもできないよ。(カブトムシを見てご覧。大きな木の上に登って蜜を吸っている。飽きたらハネを広げ空を飛んで他の木に移る。ゲームより楽しそうじゃないか。)...。

人間には大した意味などなく、遺伝子が先に進むことこそ唯一の意味だとしたら。先に進むという本質的な意味を持つ遺伝子の、人間はなに一つ意味をもたないただの乗り物、肉の塊。生きているうちは動く肉の塊。死んだ後は動かない肉の塊。やがて腐って朽ち果てる。


われは意味をもたない肉の塊。
しかしわれはわれの意味を強く求める。

心配要らないさ、人間は宇宙規模の大きな仕事をしているさ、二酸化炭素を大量に出し続け、自然を崩壊させようとしているじゃないか。毎年毎年、記録的大雨とか記録的猛暑とか記録的の大行進。宇宙人は存在するのか?などと呑気なことを言っている場合じゃないんだ。あと1千年もすれば人類は滅びるかもしれないじゃないか。その数千億年後にどこかの星で、宇宙人は存在するか?といっている宇宙人がいるかも知れない。その1千年後にはその宇宙人は人類同様滅びるかもしれない。

それが肉の塊が繰り返す歴史なのだろう。

人間は芸術を生みだすことができる。これは凄いことじゃないのか。

地球が終わればリセットじゃないか。リセットしても意味は残るのか?

わかった降参だ。ぼくは無意味な存在だよ。認める。

ところで、無意味じゃいけないのか?

いいや、そんなことはないさ。ぼくが生きているのは意味があることとは関係ないさ、神様のために生きていいるわけでもない。ぼくは自然の中で家族とともに家族の笑顔に囲まれて、好きなものを食べ、気が向いたら好きな道を散歩する。散歩の途中に草花を眺め幸せを感じる。それ以上の大切な意味なんてぼくには関係ないよ。

ぼくは正義を重んじる。神様が見ているからじゃないよ。だって、そんなものは信じていない。天国に行きたいからかだって?「もし天国が存在したらそれは間違いなく地獄だろう」。幸いなことに地獄も存在しない。そもそも、終わることのできない天国なんて想像するだけで恐ろしい。

そう、ぼくは正義を重んじる。しかし、既に述べたように、だれかの顔色を見てのことじゃない。だから、いつ、犯罪者になってもおかしくはないだろう。ぼくは、自分の心の向くほうに進んでいくだけだからだ。誰もぼくをくい止めることはできないし、安っぽい理屈は通じない。ぼくが人を殺したりしないのは、人を殺したくないのがその理由なのだ。法律のためでも社会通念のためでも倫理のためでもない。

ああ、そうだった。ぼくは倫理やら道徳やらをもちだす人間が嫌いだ。そんなものはクソ食らえだ! ぼくは善良な人を傷つけたくない。ただしそれはぼくがそうありたいからであって、それが道徳だからではない。もし、道徳に従い人を傷つけないのであれば、道徳が書き換えられれば人を傷つけることが可能となるわけだ。屁理屈じゃない。これは大切なことだ。

最後に言おう、ぼくはぼくが虫よりも意味があるなんて思わない。散歩の途中、浮浪者を見つけたら軽蔑するだろうか? するわけがないことはもうわかるだろう。

ぼくは何者かよりも偉い存在なんかじゃあり得ない。

ただ動く肉の塊なのだから。

 

..でも意思をもつ何者からも自由な肉の塊だ。

 

 

【追伸】 ぼくはこれを書いていてある映画を思いだした。

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「完全なる報復」(原題:Law Abiding Citizen)2009年のアメリカ映画。

検事として法を守る男ニック( ジェイミー・フォックス)と復讐のために法を破る男クライド(ジェラルド・バトラー)の対決の物語だ。

まぁちょっとツッコミどころはある映画だが、(それには目をつぶって)ぼくは最高に楽しめた作品だ。

クライドは二人の強盗に家族を惨殺され、その復讐を行うわけだが、彼にはそれは容易なことであり、それよりもむしろ、ニックは司法取引によって一人を死刑にして、主犯格のほうの一人を無罪とする。

しかし、ニックは並の男ではなかった。その知能と経験を駆使してを残忍なる復讐を行う。

ぼくは犯罪者クライドに感情移入していたようだ。正義面した法を守る側の人間(Law Abiding Citizen)がやられていくのが痛快だった。

ぼくの本質はかなりの悪かもしれない。この映画を観ることでそう感じてしまったよ。

えっ、何が正義を重んじる人間だって?

ぼくは法を重んじるとは言っていないよ。